委員会
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理(第3報) 「ECMOの管理について」(5/3回路・人工肺資料掲載)
会員各位
一般社団法人日本体外循環技術医学会
学術委員会 補助循環部会
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理中の感染管理について(第3報)
「ECMOの管理について」
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は国内でも感染経路が明確でない感染症例が次々と報告されるようになり,その中で重症化する症例も数多く報告されるようになってまいりました.また,クラスターによる感染の報告も数多く,医療崩壊といった言葉も聞かれるようになり,今まで以上に集中治療を含めた積極的な治療を要する症例が増加する可能性が高いと考えられています。
これまで,通常のECMO管理に併せて、感染症に対する知識と管理技術が必要とされている中,第1.2報とコロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理中の感染管理について会員施設で実践していることや感染防止策などについて報告してまいりました.現在の状況を踏まえると,ECMO症例の経験が少ない施設においても実施することも想定されます.そこで,今回は実際にV-VECMOを行った施設やECMO症例の経験が豊富な施設の管理中の条件などについて情報共有することで,ECMO対応時の一助になればと,第3報を発信することとなりました。
《 ECMO管理に伴う留意点 》
各施設からの報告は,代表的数値を切り取って報告しています.患者さんの病態や体格などによって管理方法も異なるため導入時や管理中の参考値としていただければと思います.また,施設の医師やその他スタッフとコミュニケーションをとっていただき,相談の上各患者様にとって最良の管理となるよう,各施設での規定やマニュアルを遵守していただき,ECMO経験のない施設や既にECMO実施施設でのECMO対応に役立てていただければ幸いです.
なお、本情報のお問い合わせは、以下のメールアドレスまでお願いします。
JaSECT学術委員会補助循環部会
assis_cir(アットマーク)jasect.jp (アットマーク:@)
会員施設からの報告
〜ECMOおよび周辺機器の管理について〜
A病院からの報告
1.カニューレ/人工肺/遠心ポンプ
送血カニューレ:右大腿静脈20Fr 15cm(泉工医科:PCKC- A)
脱血カニューレ:右大腿静脈-右心房24Fr 52cm(泉工医科:PCKC-V)
人工肺:TERUMO LX
遠心ポンプ:TERUMO SL
装置:TERUMO SP-101
2.人工呼吸器設定
PEEP:10cmH2O PIP:16-18cmH2O FiO2:0.21
RR:10回/min
MV:1.0L/min以下 TV:50-80ml(100ml以下):自発呼吸は極力抑える
3.ECMO管理
血液流量:4.5-5.0L/min(維持期)
Sweepガス:4.0L/min FiO2:1.0
送血ガス:PO2;500mmHg前後 CO2;35mmHg SO2;100%
熱交換器:37.5-38度(シバリング抑制)
4. バイタル
HR:120bpm以下 BP:180mmHg以下 SpO2:90% 体温:37.5度
5. 血液ガス
PH:7.35-45 PaO2:55mmHg以上 CO2:45mmHg以下 SaO2 90%以上
6. 抗凝固療法
APTT:60前後
B病院からの報告
1.カニューレ/人工肺/遠心ポンプ
送血カニューレ:右内経静脈18Fr(泉工医科)
脱血カニューレ:右大腿静脈-右心房24Fr(泉工医科)
人工肺:TERUMO LX
2.人工呼吸器設定
PEEP:10cmH2O PIP:17cmH2O FiO2:0.4 RR:12回/min
MV:1.5L/min TV:150ml
3.ECMO管理
血液流量:4L/min(維持期)
Sweepガス:3L/min FiO2:1.0
送血ガス:PO2;400mmHg前後 CO2;45mmHg SO2;100%
熱交換器:37度
4. バイタル
HR:100bpm BP:140/80mmHg SpO2:95% 体温:37.4度
5. 血液ガス
PH:7.4 PaO2:70mmHg台 CO2:40mmHg台
6. 抗凝固療法
APTT:40台 ACT:180sec前後
C病院からの報告
1.カニューレ/人工肺/遠心ポンプ
送血カニューレ:右内経静脈16.5Fr(テルモ)
脱血カニューレ:右大腿静脈-右心房25Fr(エドワーズ)
人工肺:TERUMO LX
遠心ポンプ:TERUMO SL
2.人工呼吸器設定
PEEP:10cmH2O PIP:15cmH2O FiO2:0.4 RR:10回/min
MV:3.0L/min TV:100ml(経肺圧で調整)
3.ECMO管理
血液流量:4.5L/min(維持期)
Sweepガス:3L/min FiO2:1.0
送血ガス:PO2;350mmHg前後 CO2;45mmHg SO2;100%
熱交換器:使用しない
4. バイタル
BP:140/80mmHg SpO2:85-90% 体温:37度
5. 血液ガス
PH:7.3 PaO2:70mmHg台 CO2:40mmHg台
6. 抗凝固療法
APTT:45前後 ACT:150sec前後
D病院からの報告
1.カニューレ/人工肺/遠心ポンプ
送血カニューレ:右大腿静脈19Fr-23cm(Getinge HLS)
脱血カニューレ:右内頸静脈経由右心房25Fr-38cm(Getinge HLS)
人工肺:TERUMO LX
遠心ポンプ:泉工 HCF-23MP
装置:泉工 UNIMO
2.人工呼吸器設定
PEEP:10cmH2O PIP:20cmH2O FiO2:0.4-0.5
RR:10回/min(実測20回/min)
MV:4.0L/min TV:200ml
3.ECMO管理
血液流量:4.5-5.0L/min(維持期)
Sweepガス:4.0L/min FiO2:1.0
熱交換器:37.5度
4. バイタル
HR:60-70bpm BP:100-150mmHg SpO2:80-90% 体温:38.4度
5. 血液ガス
PH:7.49 PaO2:40-50mmHg台 CO2:45mmHg台 SaO2 80%
6. 抗凝固療法
APTT:40-50台 ACT:180sec前後
E病院からの報告
1.カニューレ/人工肺/遠心ポンプ
送血カニューレ:右内経静脈-上大静脈 21Fr 38cm(HLS Getinge)
脱血カニューレ:右大腿静脈-下大静脈 24Fr(PCKC-V 泉工)
人工肺:人工肺 メラエクセランHPO23WH(泉工医科)
遠心ポンプ:メラ遠心ポンプHCF-MP23H(泉工医科)
2.人工呼吸器設定
PEEP:10cmH2O PIP:15cmH2O FiO2:0.4
RR:10回/min
3.ECMO管理
血液流量:4.0-6.0L/min(維持期)
Sweepガス:3.0L/min FiO2:1.0
送血ガス:PO2;500mmHg前後 CO2;40mmHg SO2;100%
熱交換器:37.5度
4. バイタル
SpO2:80-100%
5. 血液ガス
PH:7.3 PaO2:60-80mmHg台 CO2:40mmHg台 SaO2 80%
6. 抗凝固療法
APTT:45-60台 ACT:160sec前後
F病院からの報告
1.カニューレ/人工肺/遠心ポンプ
送血カニューレ:右大腿静脈 23Fr 15cm(HLS Getinge)
脱血カニューレ:右内頚静脈 25Fr 38cm(HLS Getinge)
人工肺:人工肺 メラエクセランHPO23WH(泉工医科)
遠心ポンプ:RF(Detinge)
2.人工呼吸器設定
PEEP:10cmH2O PIP:20cmH2O FiO2:0.4
RR:10回/min
TV:300
MV:4.0l/min
Mode:PC
3.ECMO管理
血液流量:4.0-4.5L/min
Sweepガス:3.0L/min FiO2:1.0(血ガスにて調節)
送血ガス:PO2;400mmHg前後 CO2;35-40mmHg SO2;100%
熱交換器:37.5度
4. バイタル
SpO2:85-90% 体温:36度
5. 血液ガス
PH:7.38 PaO2:80-90mmHg台 CO2:40mmHg台
6. 抗凝固療法
APTT:45-60前後(6h毎) ACT:160-170sec前後(24h)
Q&A
Q.1 ECMO管理中の体位,リハビリはどのようにしていますか?
A1.可能な限り体位変換を積極的に行う.
A2.導入後から伏臥位療法を併用している.施行時間は以下の通りでした.3日間(5時間×1,17時間×2)
A3.褥瘡予防のみでした。通常のRespiratoryECMOでは体位呼吸療法を併用することもあります。
Q.2 ECMOの施行期間はどの程度でしたか?また,回路交換など行った場合
はどのような方法で行いましたか?
A1.回交換を行いました.交換は回路の全交換を行い,プライミングはもう一台の機会を使用して病室の外で行いました.プライミング後,回路だけを部屋の中に持ち込み,清潔野で回路接続中に機器への付け替えを1名で行いました.
A2.回路交換はしませんでした。通常はガス交換能の低下や血栓形成で交換します。グリーンゾーンでプライミング後、室内に持ち込んで行う予定ですが、装置の台数が不足した場合には手回しハンドルでプライミングしたこともありました。
Q.3 血液データとしてHct,Hbの値は?
A1.今回はHb10g/dL前後でした。目標10g/dL以上ですが、動脈血のSaO2やDO2などを考慮して、輸血にてHb,Htを調整します。
Q.4 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対するECMO管理で注意する点はありますか?
A1.血液ガス分析装置を取付け,人工肺評価の採血は校正時など最低限の回数としました.
A2.連続血液ガス分析装置を取付け,人工肺評価の採血は校正時だけにして最低限の回数としました.ガスフラッシュは、装置がオートフラッシュ機能を有しているので、自動で実施しました。人工肺によるエアロゾル感染は賛否あるので、N95マスク着用としました。
Q.5 ECMO Weaningの基準または離脱テストなどはどのように行いましたか?
A1.CTにて画像診断後、離脱開始しました。離脱は動脈血のガスを見ながら吹送ガスのFiO2を下げていき、その後血流量を下げながらガスを評価し、離脱しました。
A2.SweepガスをOffにしてガス評価を行いました.15-20分程度この状態で呼吸の状態を確認し離脱の判断をします.頻呼吸になる場合は,テストを中止します.
Q.6 ECMO管理中にCRRTは行いましたか?また,施行方法はどうしましたか?
A1.カラムはsepXiris150を使用して抗凝固薬はナファモスタットメシル酸塩でコントロールしました.アクセスはECMO回路の陽圧側でバイパスした側枝から行いました.
A2.カラムはsepXiris150で開始して,その後AEF1.0に変更しました.抗凝固薬はナファモスタットメシル酸塩でコントロールし数日後にNone.アクセ スはECMO回路から行った.
A3.カラムはAEF-1.0またはUT-1100Sを使用した.抗凝固薬は必要に応じて,ナファモスタットメシル酸塩でコントロールした.アクセスは,ダブルルーメンカテーテルを挿入しCRRTを行った.
【添付資料:ECMO回路 人工肺について】