MENU

CLOSE

委員会

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理中の感染管理について(第4報) 「ECMO離脱について」

会員各位

一般社団法人日本体外循環技術医学会

学術委員会 補助循環部会

 

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理中の感染管理について(第4報) 

「ECMO離脱について」

 

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)における重症呼吸不全に対し、ECMOを使用した治療が国内でも実施されておりますが、海外ECMO施設との比較でも良い治療成績と言われています。

 現在は「緊急事態宣言」が解除され、自粛の効果もあり新たな感染者が減少してきている報道が多くなりました。しかし、今後、第2波、第3波からの再感染拡大も起こりえる可能性もあると言われており、まだまだ油断出来ない状況だと思います。このまま、終息に向かっていければと誰もが思っていることですが、再感染拡大の可能性に対する対応を今までの経験やデータを元に構築していかなければいけないと考えられています。

 これまで,通常のECMO管理に併せて、感染症に対する知識と管理技術が必要とされている中、第1.2.3報とコロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理中の感染管理について会員施設で実践していることや感染防止策などについて報告してまいりました。今回は実際にV-VECMOを行った施設やECMO症例の経験が豊富な施設の離脱条件などについて情報共有することで,ECMO対応時の一助になればと,第4報を発信することとなりました。

 

《 ECMO管理に伴う留意点 》

各施設からの報告は,代表的数値を切り取って報告しています。患者さんの病態や体格などによって管理方法も異なるため導入時や管理中の参考値としていただければと思います。また,施設の医師やその他スタッフとコミュニケーションをとっていただき,相談の上各患者様にとって最良の管理となるよう,各施設での規定やマニュアルを遵守していただき,ECMO経験のない施設や既にECMO実施施設でのECMO対応に役立てていただければ幸いです。

 

なお、本情報のお問い合わせは、以下のメールアドレスまでお願いします。
JaSECT学術委員会補助循環部会
assis_cir(アットマーク)jasect.jp  (アットマーク:@)

 

会員施設からの報告
〜ECMOおよび周辺機器の管理について〜

A病院の場合
離脱プロセスは、基礎疾患の治療と肺機能の改善が成功した後に開始する。
Lung restの設定(FiO2 <0.6、PEEP <10-15cmH2O、ΔP 10-15cmH2O、RR 12/分)で、SpO2>90%、胸部X線写真で、上下左右とも含気が出ていて、コンプライアンスの改善を認め、胸郭の上がりが良好かつ循環動態に問題が無い事を確認し、生体肺におけるCO2クリアランスが増加し始めたら、血液流量を3L/min(前後)に維持しながら、FiO2を徐々に減らす。FiO₂=21%になれば、次にSweepガスを0.5L/minずつ減量して、pH値は調整する。0.5L/minまで下げれたら、Sweepガスを中止し、離脱テストを行う。
ECMO設定が調整されるたびに、30分程度の間隔で血液ガス分析をチェックする。
2~6時間の離脱テストで血液ガスが安定しP/F> 150-200、患者が呼吸困難または頻呼吸を発症しない場合、ECMOを外す判断をする。
患者の抗凝固状態に応じて、ヘパリン投与を中止し、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、血小板数をチェックしてから、ECMOを取り外し、カニューレ抜去部は圧迫止血する。

 

B病院の場合
1週間-10日あたりで画像による評価を行うためにCT撮影を行い,改善を認めた場合に離脱テストを実施します。
この段階で,鎮静は浅くなっているため,
呼吸器の設定
PEEP:10mmHg ΔP:8mmHg→10-15mmHg RR:12-15/min
Sweep gasを低下させPH7.45↑のアルカローシスに調整し,自発呼吸を少し有意な状態で換気が得られること頻呼吸にならないことを確認する。
この時点でRRが30回/分になるようなら離脱テストは中止し,ECMOを継続する。
頻呼吸を認めなければ,1回換気量が得られるまでΔPを上げていき
換気が問題ないことを確認してSweep gasを停止する。
20分程度で血液ガス分析をチェックして,呼吸器のFiO₂は50%以下でP/F>200とし問題なければ離脱テスト成功として離脱の準備を開始する。また,呼吸器のFiO₂を100%の設定にしてPaO₂の評価を行う。
カニューレの抜去部は圧迫止血でする。使用後の機器は,部屋の中に患者退室まで置いておき紫外線装置による照射を行った後に部屋外に搬出する。

 

C病院の場合
①胸写、CT
COVID-19の患者については、胸写での変化が見られない場合が多いため、移動可能な場合にはCT撮影を検討し病状把握に努める。
②人工呼吸器
当院のCOVID-19患者のRespilatoryECMOでは強いアシドーシス傾向の経験がなく、CO₂排出能が保たれコンプライアンス低下が少ないが、酸素化能の低下が強く見られるため、ECMOテーパリングに併せて、換気条件の設定変更を行う。
③ECMO離脱
鎮静・筋弛緩薬の減量、栄養の検討をし、ECMOの血液流量を2L/minまで下げ患者の状態を確認後、徐々にFiO₂とガス流量を下げて離脱を行う。
離脱は、数日間かけて徐々に行う。
ECMO灌流停止後のカニューレ抜去については、用手圧迫にて止血を実施する。

 

D病院の場合
当院では、数時間で離脱はなかなかできていないのが現状。6時間以上は見ていることが多く、ECMOサポート期間が長ければ長いほど離脱に関しても慎重になっている。

 

E病院の場合
Lung restの設定(FiO₂<0.4、PEEP<10-15cmH₂O、ΔP<10-15cmH₂ O、RR 12/分)で、SpO₂>90%、胸部X線写真で、上下左右とも含気が出ていて、コンプライアンスの改善を認め、胸郭の上がりが良好かつ循環動態に問題が無い事を確認し、生体肺における酸素化と換気に問題が無ければ今の血液流量を維持したまま、FiO₂を徐々に下げていく。FiO₂=21%になれば、次にSweepガスを1.0L/minずつ下げていき、Sweepガス2.0L/minで血ガスに問題なければ酸素チューブを人工肺から外して、離脱テストを行う。血液流量はテスト前を維持したまま。
離脱テスト中は、テスト開始後30分に、Aラインの血液ガスをチェックし、CO₂の貯留、酸素化の低下、患者の頻呼吸並びに分時換気量の増加、不整脈の出現、徐脈、血圧低下などが起きていないか確認する。
開始後30分の血液ガス、呼吸状態に問題なければ数時間様子を見て、再度呼吸状
態、バイタルサインに問題なければそのまま数時間経過を見て離脱する。
離脱は患者の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、血小板数をチェックし、
必要に応じて輸血を準備する。離脱2時間前からヘパリン投与を中止して、抜去前にACT確認後、ECMOの血液循環を止め、カニューレを抜去する。抜去部は圧迫止血する。

 

F病院の場合
一般的なLung restの設定(FiO2 <0.4、PEEP <10-15cmH2O、ΔP <10cmH2O、RR 10/分)下で、SpO₂>90%でCTにて肺野の改善を認め、肺コンプライアンスの向上が確認できている状態で循環動態が安定していれば、恐らくTVも徐々に入る様になってきていると思うので呼吸器設定もΔP 、RR、Fi0₂を少し増やす。
同時に血流量を徐々に下げていき、2.0〜1.5L/minを維持したまま問題がなければFiO₂を徐々に下げ、21%まで下げることができれば次にsweep gasを徐々に0.5L/minまで下げ最終的にsweep gas offとし、離脱テストを行う。
離脱テストの開始は必ず朝のカンファ後から開始し、3~4時間かけて評価し
昼頃離脱とすることが多い。

 

G病院の場合
胸部レントゲン写真で大まかな肺の改善傾向を確認して,場合によっては胸部CTを撮ってからconsolidationの改善等を評価して離脱に向かう。
Lung rest 設定としてはFiO₂< 0.4,PIP<25cmH₂O,PEEP<10cmH₂O,呼吸回数 10回/分としてるが,PIPはもっと低い20未満くらいが多い。
ECMO導入の適応が低酸素であれば,血流量はそのままでFiO₂を下げて人工呼吸器のFiO₂が60以下でPaO₂を見れるくらいまで(PF200目標)低下させる。喘息やCOPDの重積発作であれば酸素流量の低下による離脱を0.5Lずつ下げる。FiO₂を21%まで下げれたら血流量を2L/minまで低下させてそれ以上は下げずに半日程度診る。(長ければ1日くらい)。
酸素流量も下げるが,当院では過去にゼロまで下げてしまえば人工肺のガス層が結露でほとんど流れないくらいP4(酸素吹送圧)が上昇し,水浸しになったことがある(注)ので,0.5L/min未満は換気補助にも影響をほぼ与えないと考えて,それ以上は下げないようにしている。
抜去時は毎回心臓外科による外科的に止血を行う。

 

(注)
ECMO管理の際、結露によるガス交換能低下に対する様々な対応が必要となりますが、使用する人工肺の種類(構造)により結露水処理に対する効果が一定ではない可能性があります。詳細はご使用されるメーカーに確認頂きますよう、お願い致します。

 

Q&A

Q 離脱テスト中、データが良い場合Sweep Gasを止めたままECMOをどのくらい(時間)回していますか?
A 2時間以上回しています。
A Sweep gasは離脱テストで20-30分止めて問題なければそのまま離脱の準備を進めていくので長くて1時間程度です,
呼吸器のFiO₂は0.5で離脱しますが,その後PEEP,ΔPの調節で多くの症例はFiO₂ 0.35-0.4に下げています。

 

Q 離脱成功の際はすぐにカニューレを抜去してしまいますか?
A 離脱後に抜去します。
A 人が集まれる時間を調整して,離脱テストをすることがほとんどなのでテストをクリアするとすぐにカニューレを抜去することが多いいです。この方法で,当日に再導入した経験はありません。

 

Q 離脱時のHb等の基準があれば教えてください。
A Hb:>10g/dl以上 Plt:>50000mm3 Fib:>100mg/dl ATⅢ:>60%
A HbはV-V施行中は低SO₂容認のため高め維持で輸血しますが,Pltに関しては明確に数値を決めておりませんが,あまり低い場合はPC輸血しますが7-8万くらい目指している。
A Hb:>10g/dl以上(目標としては12g/dlだが、酸素化に問題なければ離脱) Plt:>70000mm3

PICK UP NEWS