国際交流委員会
2019 EACTS/EACTA/EBCP 成人人工心肺ガイドラインについてのお知らせ
国際交流委員会、ガイドライン策定委員会
2019年12月に2019 EACTS/EACTA/EBCP guidelines on Cardiopulmonary bypass in adult cardiac surgeryが3学会 ※1 から出されました。Free Paperですので、ダウンロードしてぜひご覧ください。
※1 European Association for Cardio-Thoracic Surgery(EACTS), European Association of Cardiothoracic Anesthesiology(EACTA), The European Board of Cardiovascular Perfusion(EBCP)
【内容】
このガイドラインは、成人における開心術の一連の流れに沿って記載されています。各項目の最初には、現在のヨーロッパでの標準的な方法に関する記載がありますので、自施設や日本で一般的とされている方法と比較してみて下さい。その次に、様々な勧告に対するレベル(A, B, C) ※2 、クラス(Ⅰ, Ⅱa, Ⅱb, Ⅲ)※3 分類が記載されていますので、参考にしてください。なお、このクラス分類はSTS/SCAクラス分類と異なります。
※2 Level of evidence
・エビデンスA:多施設無作為化臨床試験またはメタアナリシス
・エビデンスB:単施設無作為化臨床試験または大規模無作為化試験
・エビデンスC:エキスパートたちに賛同された考え方や小規模試験、レトロスペクティブ研究などの記載
※3 Classes of recommendations
・クラスⅠ(望ましい)
エビデンスがある、利点や有効性や効果などが一般的に合意されている。
・クラスⅡ(Ⅱa, Ⅱb)
矛盾するエビデンスがある。または、手技や治療の有用性や有効性について意見が分かれている内容である。
– クラスⅡa(考慮に値する)
有用性や有効性について賛同されている考え方である。
– クラスⅡb(考慮に値するかもしれない)
有用性や有効性があまり実証されていない。
・クラスⅢ
一般的に賛同されている手技や治療ではあるが、効果的ではなく稀に有害になることもある。
【項目】
1. METHODS SUMMARY
2. INTRODUCTION
3. TRAINING, EDUCATION AND SERVICE DELIVERY
4. HEART-LUNG MACHINE HARDWARE
1) Console with pumps and holders
2) Monitoring
送血圧、Pump flow、連続的血液ガス、SvO2、NIRS、DO2 など
3) Safety features
4) Oxygen and air, carbon dioxide and volatile anesthetics supply
揮発性麻酔薬の人工肺送気について
5) Heater-Cooler unit
6) Patient data management systems and quality improvement
5. CARDIOPULMONARY BYPASS- THE DISPOSABLES
1) Cannulas
送血部位の選択理由とリスク、脱血部位、カニューレの種類、脱血方法とリスク
2) Venting and suction device
ベントやサクションによる溶血やGMEのリスクについて
3) Reservoirs
4) Oxygenators
人工肺膜材質やコーティングの有無などについてのエビデンス
5) Pumps
ローラーポンプ、遠心ポンプについて
6) Filters
フィルターの種類やGMEに関するエビデンス
7) Material and surface treatments
6. PREPARATION FOR CARDIOPULMONARY BYPASS
1) Checklist※4
2) Preoperative assessment
※4 EBCPのウエブサイトにポンプ開始前チェックリスト(参考用)が掲載されています。
https://www.ebcp.eu/login/files/b8192349de4ba7ced7dcb65c4f51ac29ae9d12c5.pdf
7. PROCEDURES DURING CARDIOPULMONARY BYPASS
1) Type of circuit
低侵襲回路のコンセプトとエビデンス
2) Carbon dioxide flush
プライミング前のCO2フラッシュとGMEとの関連性について
3) Priming volume and autologous priming
4) Anticoagulation management
抗凝固薬とHMSのエビデンスについて
5) Acid-base homeostasis and electrolyte management
α-stat、pH-statの比較
6) Control of mean arterial blood pressure
灌流圧と使用する昇圧剤の周術期への影響
7) Pump flow management
至適灌流量の考え方について(BSA, DO2)
8) Pulsatile and continuous flow
9) Goal-directed haemodynamic therapy
10) Assisted drainage
VAVDの陰圧と溶血の関係性について
11) Strategies for transfusion of blood products
Pump中のHt値、DO2、Flowについて
12) Anaesthesia and pharmacological treatment during cardiopulmonary bypass
揮発性麻酔薬、静脈麻酔薬、鎮痛剤、血糖コントロール など
13) Cardioplegia
Crystalloid、del Nidoの注入方法、注入圧 など
14) Lung protection
コーティング回路と生体適合性、MUF、低侵襲回路、Pump中のPEEP など
15) Non-invasive cerebral monitoring
16) Management of shed blood
術中回収血処理について、セルセーバーやカルディオトミーセパレート化の有用性について
17) Minimally invasive surgery
18) Emergency institution and restitution of cardiopulmonary bypass
8. SEPALATION FROM CARDIOPULMONARY BYPASS
1) Reperfusion time
2) Weaning checklist
3) Haemodynamic monitoring
4) Positive inotropes
ドブタミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの循環作動薬について
5) Haemostasis management
6) Mechanical circulatory support
7) Residual blood management
残血の返血方法について
9. FINAL REMARKS
このガイドラインの論評がEuropean Journal of Cardio-Thoracic Surgery. 2020; 57(2): 207-209に公開されています。こちらもぜひご覧ください。
ご不明な点がございましたら、JaSECT国際交流委員会へご連絡ください。
Email:jasect_iec@jasect.jp