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お知らせ

2024 EACTS/EACTAIC/EBCP成人人工心肺ガイドラインについてのお知らせ

国際交流委員会、ガイドライン策定委員会

 

今年発行されたThe European Journal of Cardio-thoracic Surgeryに2024 EACTS/EACTAIC/EBCP guidelines on Cardiopulmonary bypass in adult cardiac surgeryが掲載されました。このガイドラインは2019年に出されたガイドラインのアップデート版になります。Free paperですので、ダウンロードしてぜひご覧ください。

 

2019年版から追加された内容は以下の通りです(1.2 What’s newより)

・5.8章では、チューブに争点を当て、特にチューブの材料における可塑剤の使用に関して述べられている。

・モニタリングに関する第6章では、血行動態のモニタリングと管理だけでなく、脳のモニタリングに関する推奨事項が追加された。

・第7章 臓器保護では、人工心肺中の臓器保護戦略に関するエビデンスをまとめている。

・血液浄化に関する新しい章、9.10 が導入された。

・第10章では、大動脈および弓部大動脈の手術における人工心肺戦略を中心に、特定の手技における人工心肺について述べている。

・第12章では人工心肺中の具体的な状況を取り上げ、有害事象の管理に取り組んでいる。

 

また、新しく追加された項目でクラスⅠ、クラスⅢに分類されている項目、2019年版ではクラスⅡに分類されていた項目のうち、2024年版でクラスⅠに上げられた主な項目は以下の通りです。参考にしてください。

 

クラスⅠ(望ましい)

エビデンスがある、利点や有効性や効果などが一般的に合意されている。

 

  1. 人工心肺装置

4.5 ヒータークーラー(HCU)関連

・HCUに関連する可能性のあるマイコバクテリウム・キマイラ感染を検出するためのプロトコルをECDC(European Centre for Disease Prevention and Control)の基準に従った施設の方針に沿って採用することが推奨される(クラスⅠ、レベルB)。

・サンプリング、洗浄、消毒の手順は、製造業者または他の有効なプロトコルに従って、定期的に最低でも1年ごとに実施しなければならない(クラスⅠ、レベルC)。

4.6 患者データ管理および品質改善

・人工心肺プログラムでは、さらなる評価とリスク層別化のために、人工心肺パラメータの電子的自動データ記録が推奨される(クラスⅠ、レベルB)。

 

  1. モニタリング

・局所的な高体温を避けるために、CPB中に患者の血液と組織の温度を複数箇所で同時に測定することが推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

 

  1. 臓器保護

7.5 心筋管理‐心筋保護

・心筋保護戦略は、固定された施設での心筋保護液に依存するのではなく、患者を中心とし、臨床的・病理解剖学的条件や手技の複雑性に基づいて調整されることが推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

・TOE(transesophageal echocardiography)の禁忌がない限り、心臓手術を受ける全ての患者において、心筋保護戦略の即時的な品質管理のために、CPB前後のTOEによるLVおよびRV機能の術中評価を実施することが推奨される(クラスⅠ、レベルB)。

・RVとLVの機能、特に中隔の動きと心臓特異的酵素の放出については、術後24時間以内にルーチンで検討することが推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

7.6 脳保護

・人工心肺中の全身高体温を避けるため、人工肺の動脈出口温度を37℃以下に制限することが推奨される(クラスⅠ、レベルA)。

 

  1. 人工心肺中の手順

9.2 プライミング – 組成、ボリューム、自己血プライミング(順行性、逆行性)

・プライミング液に薬剤を追加する場合は、患者ごとに個別化し、臨床チームで話し合うことが推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

9.3 抗凝固管理

・プロタミンの過剰投与を避けるため、プロタミン/ヘパリン比率を1.0未満にすることが推奨される(クラスⅠ、レベルB)

9.5 ポンプ流量管理

・AKIステージ1のリスクを軽減するために、DO2の最低値を280ml/min/m2とすることが推奨される(クラスⅠ、レベルA)。

9.7 Goal-directed Perfusion

・術後早期の急性腎障害の発症率を低下させるために、GDPが推奨される(クラスⅠ、レベルA)。

・GDPはDO2の最低値を制限し、DO2値が低い人工心肺時間の長さを制限することを目的とすることが推奨される(クラスⅠ、レベルB)。

 

  1. 特定手技の人工心肺

10.1 弓部大動脈手術における人工心肺戦略

・HCA(Hyperthermic circulatory assist)で弓部大動脈の手術を受ける患者には鼻咽頭温と深部温(直腸温/膀胱温)の測定が推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

・弓部大動脈手術中やDHCA(Deep Hypothermic circulatory arrest)中には、両側の近赤外線分光法による脳内酸素モニタリングが推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

 

  1. 人工心肺中の特定の状況

・有害事象に対処するためのチェックリスト、標準操作手順、シミュレーショントレーニング、および他分野にわたる評価が推奨される(クラスⅠ、レベルB)。

・有害事象の報告システムを臨床および国の規制に従って確立することが推奨される(クラスⅠ、レベルC)。

 

クラスⅢ

一般的に賛同されている手技や治療ではあるが、効果的ではなく稀に有害になることもある。

  1. 臓器保護

7.7 腎臓保護

・AKIを軽減するために、人工心肺中に血管作動薬をルーチン使用して高MAP(mean arterial pressure)を目標とすることは推奨されない(クラスⅢ、レベルA)。

 

  1. 人工心肺中の手順

9.2 プライミング ―組成、ボリューム、自己血プライミング(順行性、逆行性)

・プライミング液にマンニトールをルーチン使用することは推奨されない(クラスⅢ、レベルB)

9.10 血液浄化

・人工心肺中のHA(Haemoadsorption)のルーチン使用は推奨されない(クラスⅢ、レベルB)

 

また、9.3 抗凝固管理にはプロタミンの投与の開始と同時に、吸引を止めるべきである(クラスⅡa、レベルC)という項目も付け加わりましたので、それぞれのご施設の対応の仕方を見直していただければと思います。

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