MENU

CLOSE

委員会

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する ECMO管理(第2報) 「導入時について」(4/21飛散防止カバー情報追加)

会員各位

一般社団法人日本体外循環技術医学会

学術委員会 補助循環部会

 

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対するECMO管理中の感染管理について(第2報)

 

 前回4月10日に「ICU管理について」「使用後の装置の清掃について」「その他、人工呼吸器・CRRTについて」の情報を発信させていただきました。その後、会員から新たな知見を頂く事ができましたので、今回は「導入時について」を中心に紹介させて頂きます。
 前回同様、本情報はJaSECT会員の施設にて、場所や医療資器材、様々な情報が不足する中での経験をご紹介させていただきます。これらの報告についてはエビデンスが無いため、各施設での規定やマニュアルを遵守していただき、ECMO経験のない施設や既にECMO実施施設でのECMO対応に役立てていただければ幸いです。

 

なお、本情報のお問い合わせは、以下のメールアドレスまでお願いします。
JaSECT学術委員会補助循環部会
assis_cir(アットマーク)jasect.jp  (アットマーク:@)

 

会員施設からの報告
〜ECMO導入について〜

A病院からの報告
現在の対応ですが、COVID-19は接触感染扱いとなりましたので、カテーテル室での導入となりました。
経験的に思ったのは、肺炎が主訴ですので、隔離室内で毎日X線写真を撮るときの防護服(プロテクタ)が問題となりました。特に、防護服はPPEの外につけることになるので、汚染されます。このため、当院では、放射線部で廃棄予定の防護服を準備して、それを常時室内に入れておきました。そうしないと、狭い部屋の中で放射線技師さんの後ろにスタッフ全員、一列に並ぶ必要があり、部屋が狭いためできませんでした。
その他、CV穿刺などはエコーガイドで行っていますので、個室でエコーも利用できるように準備しています。

B病院からの報告
1. カテーテル室の空調システムについて
COVID-19の受け入れは、救命救急センターで、搬入口、ICU、CTおよびカテーテル室が1階に隣接した構造になっています。救命救急センター内の換気システムを確認するとICUの個室はフィルタ内蔵で陰圧制御されていました。その他のCT室やカテーテル室などは吸気と排気が独立した換気システムで作動していました。カテーテル室は陽圧に調整されていましたが、天井裏の吸気口をビニールで封鎖させて、排気のみの換気システムを作動させカテーテル室内を陰圧に保つことが可能になりました。
このような環境整備が短期間に行えたことからECMOカニュレーションはカテーテル室で行っています。カテーテル室を利用する場合はICUまでの患者移動が伴います。そのため移動経路の棚などをビニールで養生してから患者移動を行っています。カテーテル室内の移動できるカート・棚・小物を別の部屋に移動させて、カテーテル室内および準備室・移動の廊下を養生を終えるまでに1時間ほど要します。。
ECMO管理中にHb値が低下する症例を経験しました。その際はカテーテル治療が検討されましたので、カニュレーション以外でもカテーテル室を利用されるケースがあることが分かりました。

2.個人防護具について
カテーテル室でのカニュレーション時の個人防護具の利用についてですが、挿管後であるということから、プロテクタの上からサージカルガウンを着用し、N-95マスク、シールドマスク、キャップでした。カニュレーションを行う医師2名はさらにゴーグルと頭から首を覆うキャップ(忍者帽子)で防御しました。初回は、細々な物品整備が行き届かず、ECMO導入に1時間程度かかりました。防護服(タイベック)を着用する基準は、挿管時やネーザルハイフロー利用など飛沫やエアロゾルが発生する危険性のある場合としています。

3.カテーテル室の人員体制について
カテーテル室内は医師2名、看護師1名、CE1名でした。操作室側には、医師1名、看護師1名、CE1名、放射線技師1名でした。

4.その他
ECMOプライミングは、清潔区域で行い、患者入室前にカテーテル室に搬入しました。

C病院からの報告
COVID-19の患者は陰圧のかかる個室でECMOの導入を行いました。
当院では原則ECMO導入は透視下を第一選択としていますが、透視環境までの移動が困難な場合は経食道エコー、もしくは経胸壁エコーでIVCもしくは右房にガイドワイヤーを確認してからカニュレーションしています。
ECPR時も一時的に胸骨圧迫を中断してエコーを当てて確認していて、ガイドなしではカニュレーションしないことを原則にはしています。

D病院からの報告
透視下でカニュレーションを行うためにカテーテル室で行います。
搬送経路や暴露の問題もあるかとは思いますが、院内の感染制御センターとのミーティングで決定しました。

1. カテーテル室の空調システムについて
カテーテル室は陰圧にはなりません。施設課に確認したところ空調システムは、常に室内は循環されていて、HEPAフィルタを介して施設外へ排出される構造であること。室内の空気は約15分で入れ替えることが可能ということから同フロアへの拡散はないとの理由からです。
使用後は1時間程度で使用は可能とのことでした。

2.個人防護具について
カテーテル室内に入室する際は、プロテクタ装着した上にフルPPEとなっています。

3.カテーテル室の人員体制について
CEは2名で対応します。1名はカテーテル室の室内業務を担当します。もう1名はカテーテル室の操作室側で業務を行います。

4.その他
ECMOのプライミングは患者入室前に行い、予めカテーテル室内に入れておきます。

E病院からの報告
PCPS(V-A ECMO)を緊急(特に蘇生)で導入する場合には、「急ぐあまり血管損傷」のリスクが高いので、必ずX線透視下で導入しています。
一方、COVID-19のように徐々に呼吸機能が低下してきて、V-V ECMOを導入する場合には、ある程度時間的余裕があるので、「落ち着いて血管確保」ができるように思います。今回の場合、カテ室などへの移動で感染を広めるリスクを伴いますので、あえて移動せず病室で導入しています。
ただ、この場合でもカニューレの位置確認は必要ですから、エコーを利用しています。

G病院からの報告
1. カテーテル室の空調システムについて
陽圧の心カテ室を陰圧室に変更しましたので報告させて頂きます。
カテーテル室と同じフロアには、高度救命救急センターとCCUで60床、心カテ室、緊急OPE室があり、COVID-19患者にPCI等を施行せざるを得ない場合に、このエリア全体の汚染を防ぐ必要があるという考えがあったためです。
暴露する可能性としては、以下の2点でした。
 COVID-19陽性で挿管+人工鼻(フィルター機能付)管理していれば良いという意見もありましたが、呼吸器回路が外れた際にはカテーテル室外への暴露する可能性がある。
 緊急搬送で受け入れた患者が、後にCOVID-19陽性と分かった場合、カテーテル室外への暴露する可能性がある。

2.ICUの個室管理される患者については、原則エコーガイドでのカニュレーションとしています。個室にエコーを入れ、そこでカニュレーションを行い、小型透視装置を利用して挿入位置の確認を行うことにしています。

H病院からの報告
1. 空調について
COVID-19の患者は個室で管理しています、特に陰圧の部屋に限定していません。

2. ECMO導入
COVID-19患者に関わらず、エコー+X線装置を利用して導入します。導入手順は、4Frシースを大腿と内頸Vに挿入してカニューレ用のガイドワイヤーを挿入した段階で撮影します。静脈に挿入されているのを確認してカニューレを挿入し2回目の撮影を行います。カニューレの位置を調整後、再度3回目撮影を行います。問題なければX線装置での撮影は3回です。カニューレの位置は、長期的な使用を考慮して深めで固定します。

3. 人員体制と管理方法について
CEは1名で行いました。導入後はCDIで人工肺の確認を行い、抗凝固はAPTT(6時間毎)で管理します。ガスフラッシュは定期的な施行は看護師に行なっていただいています。CEによる点検は部屋の外から朝・夕に行います。
X線装置使用時の防護服は、COVID-19患者の部屋は2重扉になっているため撮影時は病室側の扉の外(前室)まで全員が離れて撮影を行うため使用していません。照射部位から2m以上離れ、かつガラス扉があるためこのような対応となっています。


〜患者搬送について〜

A病院からの報告
現在の対応ですが、COVID-19は接触感染扱いとなりましたので、CT室への移動も通常通り行っています。

D病院からの報告
挿管中の患者搬送は人工鼻を使用する場合と人工呼吸器を利用する場合があります。利用する人工呼吸器の条件としては、空気の吸入口にHEPAフィルタが装着された機種を利用し、呼気側にバクテリアフィルター(サーボガード)を装着しています。
CEは1名が帯同します。

H病院からの報告
搬送に関しては、必ずハミルトンの搬送用呼吸器(呼気側フィルター:ポール社 呼吸フィルタ)を使用して検査に行くこととしています。ECMO装着時、CT検査への搬送は、特別な対策は行わず通常の対応と同じように行っています。その際、CEは1名同行します。


Q&A

Q1 ICUで導入する際にエコーや回診用X線装置はCOVID-19専用として準汚染区域で管理されていますか?
A1 A病院ですが、X線装置は台数が少ないので専用になっていません。防護服のみ廃棄予定のものを取り寄せて、室内に専用でおいてあります。

Q2 ECMO導入のために多くのゴミがでると思いますが、回路の組立、プライミングはどこで行っていますか?
A 組立・プライミングは清潔区域で行ってから、装置を搬入しています。カニューレなどの外箱は清潔区域で廃棄してから部屋に入れています。カニューレなどが包装されていた、袋やトレーは汚染廃棄物として個室内に保管し、廃棄しています。

Q3  カテーテル室内には多くの医療材料や医療機器があるはずです。どうような配慮が必要ですか?
A D病院では、カテ-テル台から壁周りの材料棚、機器まではある程度の距離があります。また空調により室内の大気は常に排気されていることから、カテーテル室内の材料や機器を室外に出すことや覆いをかけるなどは行わず、普段通りに行っています。

Q4 処置を行う時の工夫があれば教えてください。
A 飛沫拡散防止に作成しました。フレームはアルミ板で加工しています。挿管時、喀痰吸引に使ってもらえています。シールドフィルムはテーブルクロス用のビニールを貼っていますが、サランラップでも良いようです。

 

 

Q5 陰圧室が利用できない時の対策を教えてください。
A  I病院でも接触感染に特に注意して取り組んでいますが、血液内科がクリーンパーティション(日本エアーテック株式会社、ACP-897CH)を持っていたので、念のために利用しています。

Q6 前回の情報で、「CRRTの廃液は、個人用透析液のポリ容器で固めて廃棄しています。」という回答がありました。私の病院では、排液を固める習慣がなく、いざ調べてみると、CRRTの排液を固めるためには相当量の凝固剤が必要になりそうです。他の施設のご意見を頂く事が可能でしょうか?

A6 A病院では、排液はそのまま汚物槽に流しています。排液の跳ねっ返りが危険ですから、手袋、ガウンテクニックとマスク・フェイスシールドは行っています。当院の感染管理規定により血液も含めてそのまま汚物槽に流して良いことになっています。病院の設備によってルールが異なるかもしれませんので、確認が必要だと思います。
C病院では、各部屋にある汚物流しにそのまま流しています.感染制御部に確認もしましたが,問題ないと返事をいただいています.もし血漿交換をするようなことがあれば排液に必ずウイルスがいますから取扱には注してください。
E病院では、CRRTの排液ラインを直接病室の排水管に接続するキットを作り、排液しています。個人用透析装置の排水と同じように行っています。
 
 

PICK UP NEWS